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県産材を使うということ。


石川県は森林面積が全体の69%を占める、資源豊かな森林県。樹木は家や街づくりの材料になるだけでなく、
水や空気を浄化し、さまざまな災害から私たちを守っています。ですが木は手入れをしなければ、健康で丈夫には育ちません。
県産材を活用することは木や里山を育て、街や暮らし、産業を整備して、また山に恵みを返す良い循環を生みだします。

『ブランド化。平坦ではなかった道のり』

鳳至木材株式会社 取締役 四住一也 氏

石川県の県木、アテ。優れた品質を持ち、能登ヒバとも呼ばれるその木を、全国に広めるべくブランド化を推進してきたのが鳳至木材・四住氏だ。製材業の会社が、どうしてブランド化を進めたのか?それはどのような道のりだったのか?四住氏に話を伺った。

鳳至木材株式会社 取締役 四住一也 氏

地元で愛されていた能登ヒバ

私が鳳至木材に入社したのはバブルが崩壊するより前の頃。元々は東京の大手製薬メーカーで営業マンをしていました。そこで営業のイロハを叩き込んでもらった。それから地元・輪島に帰ってきて、父が経営していた鳳至木材に入社しました。
この輪島という地域は輪島塗りで有名ですが、その木材の表面にも漆を塗る文化がある。柱にも床材にも全部に塗ります。そんな場所、日本で他には無いんですよ。「地元の大工さんが地元の木を使う」ということが長年続いてきた土地なんです。その頃のウチの売上構成は、地元の大工さん・工務店さん向けが5割を占めていた。残りは富山が3割、金沢が2割でした。
ちなみに、富山では昔から木材として能登ヒバが使われていました。能登ヒバは檜よりも価格が安く、シロアリに食われくいし、腐りに強い。富山の人たちは能登ヒバがいい木だって知ってたんですね。

木材価格の下落。生き残るための決断。

時代がどんどん変化してバブル崩壊以降、ウチが取引させてもらっていたお客さんも減りました。
それと同時に、日本の住宅の様式や構造が変化して無垢材から集成材へシフトしたことで檜の価格も落ちていきました。すると「檜が安いのに、なんで能登ヒバはこんなに高いんだ」と言われる様になり、能登ヒバも価格を落とさないと買ってもらえなくなりました。ある木材流通業のお客さんからは「これからは中国に出荷していくから、能登ヒバのラミナ(集成材の材料)を挽いて欲しい」と言われました。だけど、それに手を出してしまうと、後々必ず自分の首を絞める事になると思い、グッと堪えて、大事なお客さんからの依頼でしたけど、ウチはそれを断わりました。

もがいて生まれた高品質木材。

このままたったら来年はないなと、毎年思いました。何か違うことが出来ないかと企画・計画を頭が痛くなるまでビッシリ考えていました。
その頃はまだ高級木材である青森ヒバの伐採規制がされていなくて、青森ヒバの流通が多かった。その時、能登ヒバで芯持ちの乾燥材を開発しようと思った。そして乾燥機を導入して何回も失敗をしながら製作しました。そして、木の持つ粘りを残しながら、ねじれや割れが極めて軽微な能登ヒバの芯持ちの乾燥材ができました。

能登ヒバを通して輪島の文化を伝える

ビッグサイトや色んなところに出向いて能登ヒバをPRしたり、ハウスメーカーに能登ヒバのモデルハウスを建ててもらってエンドユーザーに対して説明したりしました。イベントではクッションカバーの中に木屑を袋詰めする催し物を企画したりもしてきました。
県内のハウスメーカーが、建主さんと大黒柱を選ぶためのバスツアーをやっていて、50回以上来てもいただいてます。バス一台で建主さん10組、会社の方も合わせたら50人近くが来ます。各家族に一人ずつ社員が付き添って、建主さんの話を聴きながらどんな木が良いのか一緒に考えてる。私は建主さんに能登ヒバの良さを知ってもらい、能登ヒバが育った輪島の文化についてもお話をさせてもらっています。
価値が分かってもらえるのは1割程度の人達でしたけど、普及活動を続けてきました。すると、少しずつエンドユーザーの方々にも認識してもらえるようになり、それと平行して公共物件にも使ってもらえるようになった。最近では、金沢城に復元された鼠多門にも能登ヒバが使われています。

加速する「能登ヒバ」ブランド

石川県伝統工芸士の遠見さんが作られている「能登仁行和紙」という風合いがとても良い手漉き和紙があって、その技術で能登ヒバで住宅用の壁紙を作ってもらっている。能登ヒバのボールペンもありますよ。木の良さはやっぱり、使ってるうちに自分色に染まっていくところ。いい飴色になっていく。
私の掛けてるこのメガネは、高山で圧縮加工してもらった能登ヒバをメガネの街・鯖江に持っていき作ってもらった日本の伝統文化のコラボレーション。これを見た美術大学の学生が一目惚れして「2ヶ月間バイトで貯金してでも買いたいので、誰にも売らないでください」と言ってくれたこともある。エコ・環境・地産地消に関心のある方々も、よく買っていかれます。

必要なのはファンを作る仕事

仕事のチャンスは作りに行かないといけない。常にどうやって能登ヒバを広めていこうか考えています。
同業者の多くは値段の高かった昔を懐かしんだり、値下げして売ることで業界内で利益の取り合いをしている。買ってもらうために価値あるものを安く売ることは、業界全体の利益を目減りさせてしまう。だから三方よし。チームでやっていかないと。ビッグサイトに一緒に出店した同業者と「チーム石川」として協力したり、知り合った全国の仲間とイベント開催することで、少しずつ全国から能登ヒバの引き合いを頂く様になってきた。
誰もが自分にしかない魅力を持っているので、それをいかに活用するかが大事だと思う。
私は営業マン。色々な活動で能登ヒバファンのネットワークを作ろうとしてます。
あの時ラミナを挽いてたら、もうウチの会社はなかったと思います。間違いなく、能登ヒバはブランド化できてなかった。

インタビュアー:髙桑由樹((株)サクセスブレイン)
写真:岡崎早貴江(石川県森林組合連合会)

石川県木材利用推進協議会について


石川県木材利用推進協議会は、森林の役割と木材の良さを広く知ってもらい、木材の需要拡大を目的に活動しています。
当サイトは、その活動の一つとして木材の魅力を配信しています。
日本は、先進国の中では有数の森林大国です。
その森林の中核は終戦後に植えられた人工林で、すでに伐期を迎えるまでに成長しています。
石川県内の人工林においても、その多くは利用可能な状態に達しています。
木材を利活用することにより、森林の持つ公益的機能がより発揮され、バランスの取れた循環型社会が構築されるとともに、森林・林業・木材産業の活性化が図られます。
また、住宅分野では消費者の安全や安心に関する関心の高まりから、県産材へのニーズが高まっています。
このことから、協議会では、木材を生産する森林組合から住宅を建築する業界団体までがメンバーとなり、県産材の住宅分野での流通拡大に向けて協議を行っています。

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