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県産材を使うということ。


石川県は森林面積が全体の69%を占める、資源豊かな森林県。樹木は家や街づくりの材料になるだけでなく、
水や空気を浄化し、さまざまな災害から私たちを守っています。ですが木は手入れをしなければ、健康で丈夫には育ちません。
県産材を活用することは木や里山を育て、街や暮らし、産業を整備して、また山に恵みを返す良い循環を生みだします。

『木を活かす、とは何か』

中本製箸株式会社 代表取締役 中本実氏

石川県金沢市の中本製箸株式会社では、地元で伐採された木材の利用にこだわり、割り箸を生産している。その製品は、国内航空会社を始め、高い品質を求める企業向けに出荷されている。国産割り箸のトップメーカーは、石川の木をどのように見ているのだろう。

中本製箸株式会社 代表取締役 中本実氏

誰もやりたがらない事ばかりやってきた。

このような製品を作る会社は減ってきたね。ウチは、普通の会社なら手を出さないことをやっている。そんな自分は、馬鹿の代表だと思ってる。笑
例えば、わしは直径が平均40㎝以上の太い丸太を使っとる。太い丸太を使える製材所が少ないので、誰も買いたがらん。それをウチは買うんだから、木材市場からはモテモテや。
みんな、安く作りたいから外国産材を使って、国外で作ろうとする。でも、割り箸は口の中に入れるものだから、薬品にさらされた材料ではなく、国内の材料を使った方が絶対にいい。
元々自分は機械科の学校に居たもんやから、割り箸を作る機械を自分で開発してきた。お金がかかってばかりで、ろくなことはないけどな。オイルショックの時に開発した、油を燃やさないボイラーは東日本大震災の時にも注目された。

オイルショックと東日本大震災を救った、木の力。

オイルショックの時、軽油が8円/ℓが37円/ℓに跳ね上がったことで、続々と倒産する企業が出てきた。当時あっちこっちの港に、でっかいこと材木の木の皮が山になっていて、処理するために、ものすごい費用がかかっとった。そこで油の代わりに木の皮を燃料にして動くボイラーをウチで作った。木の皮の処理費用が減ると喜ばれ、当時は九州の会社からもウチに木屑を持ち込んできたよ。ウチとしても、木の皮から得たエネルギーを割り箸作りに生かす様になったな。
東日本大震災の時、津波による被災地は、木屑の山やった。「木屑を燃料にして、その蒸気で魚カスを乾かし、鶏の餌を作りたい」ということで、被災地からボイラーを見せてくれと問い合わせがあって、ワシは現地に作り方を教えにも行った。
被災地に行ってみると、家族も家も失い、することさえも無くなった仮設住宅の方々が 暗い顔をされていて本当に気の毒やった。「みんなで助けまいか」と考え、国内航空会社向けのお箸の袋入れを月に45万膳ずつお願いした。そして南三陸の皆さんが喜んでくれたことは忘れられんね。

木、それは魅力的な材料。

杉は食に合う。これは覚えといたら良いな。ご飯のお櫃・酒樽・醤油樽は、昔から杉を使っとる。杉は殺菌力がある。そして杉の木は食と相性が良く、食を美味しくしてくれる。横浜の焼売屋さんの食品容器にも、ウチで作った杉の板が使われている。殺菌作用があり、余分な水分も吸収するので、お弁当が美味しくなる。
ちなみに、檜も殺菌力を持ってて住宅には合うけど、匂いとヤニっ気があるから食には合わん。人間だけでなく、木材にも適材適所があるとわしは思っとる。
木は年々固くなる。鉄は年々錆びていく。コンクリは年々割れていく。年々丈夫になるのは木だけ。ウチの箸も5〜6年放ったらかしにしておくとカンカンに固くなる。だから今の新しい国立競技場だとか国立の建物は、最初は手間が掛かっても木を使おうという流れになってきている。木を使うことが森林の整備にもつながる。

環境のために、木を使う。

2000年頃まで、円高によって安いロシア材がたくさん入ってきていた。国産材を使うよりも得だからといって、日本人は日本の山をおろそかにした。大雨が降って水害が起きたとき、手入れが行き届かなかったところは被害が大きくなっている。山の木は成長しとるから使っていかないといけない。使っていくことで、山の手入れが進む。
穴水町の牡蠣貝を食べにいくと、よく分かる。やっとやっと大きな牡蠣の殻を開けて、中の身が小さかったら、みんな腹が立つでしょう。牡蠣貝屋の親父に文句を言いたくなるけど、これは「森の養分が足らん」ということなんです。魚や貝は水が良いから育つ。森林整備を怠っていると、海に流れる水に含まれる栄養が少ないから、魚・貝が育たない。食にとっても、森は非常に大事なこと。

地域と御先祖様への恩返し

わしらの子供の頃の教育に「損して得をとれ」という言葉があった。けど今は、安ければみんな何処へでも走っていく。金沢はいいところでしょ。人も遊びに来るし、食べ物も美味しいし。災害のない非常にいい環境で生活させてくれる御先祖様にお返しをしたい。わしは、住宅で使われないような大きな木を使うことで、森を若返らせるお手伝いをしたい。
だからウチは板キリコ(金沢のお墓参りで用いる道具)を提案し、全て石川の木で作っている。今では他社でも作っとるが、外国産材を使っている。でもそれでは趣旨が違う。地元の山を守るために何が大切かを考えて作って欲しい。
金沢はいいところだから、みんなで盛り上げて行ければいいと思っとる。「安ければいいというものではない。安いものは逆に高くつく」と言いたい。

インタビュアー:髙桑由樹((株)サクセスブレイン)
写真:岡崎早貴江(石川県森林組合連合会)
撮影協力:すし食いねぇ!((株)ドマックス)

石川県木材利用推進協議会について


石川県木材利用推進協議会は、森林の役割と木材の良さを広く知ってもらい、木材の需要拡大を目的に活動しています。
当サイトは、その活動の一つとして木材の魅力を配信しています。
日本は、先進国の中では有数の森林大国です。
その森林の中核は終戦後に植えられた人工林で、すでに伐期を迎えるまでに成長しています。
石川県内の人工林においても、その多くは利用可能な状態に達しています。
木材を利活用することにより、森林の持つ公益的機能がより発揮され、バランスの取れた循環型社会が構築されるとともに、森林・林業・木材産業の活性化が図られます。
また、住宅分野では消費者の安全や安心に関する関心の高まりから、県産材へのニーズが高まっています。
このことから、協議会では、木材を生産する森林組合から住宅を建築する業界団体までがメンバーとなり、県産材の住宅分野での流通拡大に向けて協議を行っています。

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