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県産材を使うということ。


石川県は森林面積が全体の69%を占める、資源豊かな森林県。樹木は家や街づくりの材料になるだけでなく、
水や空気を浄化し、さまざまな災害から私たちを守っています。ですが木は手入れをしなければ、健康で丈夫には育ちません。
県産材を活用することは木や里山を育て、街や暮らし、産業を整備して、また山に恵みを返す良い循環を生みだします。

『本物を提供するということ』

株式会社ムラモト 代表取締役 村本喜義氏①

木材流通業の中で一際、付加価値の高い材木を取り扱っている株式会社ムラモト(石川県金沢市)。その事業内容は業界常識と一線を画し、木材販売だけでなく、「木の使い方」「木のあるライフスタイル」を発信している。こだわり社長と自称する代表・村本氏に、県産材のビジョンを伺った。

株式会社ムラモト 代表取締役 村本喜義氏①

本物と偽物の違い

「偽物の家づくり」と「本物の家づくり」ってあるんや。それを分かって欲しいというのが、俺が商売をやっている一番大きな理由かもしれん。
木って色んな加工が出来る。丸太から四角くなって、例えばフローリングになったり、家具になったり。薄く剥いで表面を貼っただけだったりと、加工には色んなやり方があるけど、その中で一番、木に近いものを使って欲しい。そのことを俺は材木屋として発信している。木が持ってる素材の美しさ、自然の素材だから感じる木の有り難みは、“貼り物”からは感じることができん。
本物と偽物の一番の違いは、経年変化。使い続けることによって、偽物ってみすぼらしく感じるわけよ。偽物を使っていると「ダメになったら、また買い替えればいいわ」と人は考える。「お金があればすぐにでも買い替えたい」というのが偽物の経年変化。本物の経年変化ってのは、“愛着”なんやね。傷が付こうが、汚れが付こうが、何十年と使ったことで、風合いが変化し深みが増していく。使う人が愛着をどんどん感じていくものになっていく。それが本物と偽物の一番の違いやと思う。

“不自然な木”で、溢れかえっている

ウチは材木屋だけど、何でも扱うわけではない。ウチなりの基準以上の材料しか扱わない。例えば、新建材と言われる“木を必要以上に加工した商品”は扱わない。なるべく素に近い材料だけを扱ってる。ウチは無垢の木をやりたい。
もちろん加工した製品の良さはあるよ。あるけど、加工する元のものもあるわけや。それをちゃんと理解してもらわないといけないし、それが本物だってことを分かって欲しい。加工品ってのは、素材が持つ、反ったり動いたりといったマイナス面を新しい技術で補ったもの。でも、その元になった素材がある。俺から言わすと、反ったり動いたりする木の何が悪い?と思う。物事には何だってプラス面とマイナス面がある。マイナス面だけを捉えて、それを解消させた商品は、プラス面も失ってしまっている。俺は「プラス面が失われてしまうことの方が問題や」って思う。
今の木の使い方、一般の木に持っているイメージ、家そのものの作り方、全てにおいて「マイナス面を、なんとかせないかん」と言ってるけど、俺はそれを“偽物や”って言っとるわけ。本物はそうじゃない。マイナス面もあるけど、本来持ってる良さを一番大事にせないかん。マイナス面なんか誰にでもあるよ。多少、形を変えてまでマイナス面を解消させるではなくて、持ってる良さを理解しながらマイナスを小さくしていく。本当はそういうところに努力していかないといけないのに、マイナス面があるからといって、全くの別のものに作り変えてしまう変な技術。
今の世の中全般に言えることだけど、「マイナス面が嫌やから、これにするわ」って簡単に変えてしまう。それはどうなのかな、と思っちゃう。

日本から失われた価値観

日本は高度成長期からスクラップ&ビルドで栄えてきとるから、そのことを誰も悪いとは思っていない。逆に「スクラップ&ビルドが経済を回す」くらいの感覚でしか思ってないよね。ヨーロッパに行くと、築100年や200年の家がいっぱいある。もちろん木造ではなくて、煉瓦造りとか石造りとかだけど、築年数が古ければ古い程、評価されてるんやね。アパートも古い方が、家賃は高いとされている。それだけ古いものは“年月の経った価値のあるもの”と捉えられている。今はもう低成長時代なのにスクラップ&ビルドなんて考え方やったら、そりゃ物が足らんわね。低成長期なので給与は上がらないかもしれない。けど、充実した暮らし方はいくらでも出来る。その為には、スクラップ&ビルドではあかんわけやね。ちゃんと長持ちするもの、デザイン的にも長く使えるものを使っていくしかないわけや。不変不朽のものを使いましょうということやね。それをやらないといけない時代に来てる。本物をちゃんと作れば長く持つし、大事にしてもらえる。
「古いからこそ良い。長く使い続けられるから良い。」ここ数年で日本はやっと、古いものを評価できる土壌ができてきたのかなって思ってる。

本物を提供する”ための環境整備

建主さんは皆、高いお金を払って何十年も住む家が安心できる家であって欲しいと思ってる。耐久性・耐震性という面で住宅の下地材や構造材はものすごく大事。そして耐久性・耐震性を高める上で、“その地域で育った木を使う”ことは、絶対に間違いのないこと。
そこで建主さんが「県産材にします」と言ったとしても、十分な供給ができない状態になっているのも事実。現状、県産材の供給が充実しているわけではないので、需要を増やしていくことと同時に、供給も増やしていかないといけない。
やはり需要に応えていくためには、製材した材木を在庫できるストックヤードの整備など、行政と力を合わせた取り組みが必要だということを、今後もしっかり提案していきたい。

インタビュアー:髙桑由樹((株)サクセスブレイン)
写真:岡崎早貴江(石川県森林組合連合会)

石川県木材利用推進協議会について


石川県木材利用推進協議会は、森林の役割と木材の良さを広く知ってもらい、木材の需要拡大を目的に活動しています。
当サイトは、その活動の一つとして木材の魅力を配信しています。
日本は、先進国の中では有数の森林大国です。
その森林の中核は終戦後に植えられた人工林で、すでに伐期を迎えるまでに成長しています。
石川県内の人工林においても、その多くは利用可能な状態に達しています。
木材を利活用することにより、森林の持つ公益的機能がより発揮され、バランスの取れた循環型社会が構築されるとともに、森林・林業・木材産業の活性化が図られます。
また、住宅分野では消費者の安全や安心に関する関心の高まりから、県産材へのニーズが高まっています。
このことから、協議会では、木材を生産する森林組合から住宅を建築する業界団体までがメンバーとなり、県産材の住宅分野での流通拡大に向けて協議を行っています。

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