ホーム > 【県産材を使うということ。】いしかわの木コラム > 私には何ができるだろう?

県産材を使うということ。


石川県は森林面積が全体の69%を占める、資源豊かな森林県。樹木は家や街づくりの材料になるだけでなく、
水や空気を浄化し、さまざまな災害から私たちを守っています。ですが木は手入れをしなければ、健康で丈夫には育ちません。
県産材を活用することは木や里山を育て、街や暮らし、産業を整備して、また山に恵みを返す良い循環を生みだします。

『私には何ができるだろう?』

株式会社中野 もりラバー林業女子会@石川 砂山 亜紀子様

30代半ばで「山で起こっている問題」を知って以来、「もりラバー林業女子会@石川」の立上げ、木こりのファッションショーの開催、自身が森林施業プランナーへの転身を経て、様々な場において林業の現在・未来を発信し続ける砂山 亜紀子氏。“誰もやったことがないチャレンジ”は、どのような思いで実行に移せるのか、どのような試行錯誤があるのか。その舞台裏に迫った。

知らないから関係ない、通用しない。

私が林業を知る前のある時、登山をする友達に誘われて山林ボランティアに参加したんです。そこで『山で起こっている問題』について教えてもらったのに、いまいちピンと来ない自分がいた。ボランティアをやっている人たちは「ワシがこの山を世話することで環境を保てるんや」と誇らしげに話されているのに、一方でそれが大事だってこと自体を知らない自分がいた。私の周りに「山が大事なんだ」って話す人は、一人もいなかったんです。

でも「大事なことなんやったら、みんなが知らんといかんのじゃないの?」って思いましたね。「知らないから関係ない」わけではないと思うからです。

みんなの自分ごとへ

林業が山で木を育ててくれるから、私たちが街で木を使うことができる。木が美味しい水を作る。美味しい水が私たちの好きな食べ物を作っている。

そのことを「みんなが知るためにはどうしたらいいんやろ?」って考えるようになったことが、私が林業の世界に入った理由です。けれど「林業がなかったら蛇口のお水も飲めんくなるんやよ」って、林業のおっちゃん達がどれだけ言っても、伝わらないなと思ったんです。女性の立場で、お母さんの立場から「ねぇねぇ、ちょっとちょっと!」って言ってみたら、もしかするとみんなに響くかもしれない。だから女子から女子に伝えるために林業女子会が出来ました。「女性が変われば、家庭が変わり、社会も変わる」はず!

大事なことは、どうすればみんなにとっての自分ごとにできるか、ですね。やっぱり自分ごとにしないと、頭に入ってこないし、他人ごとである間は人って変わらないから。だから私は、山の問題を自分ごととして考えられる人を増やしたい。自分で考えることで、自分で行動に移せる人を増やしたい、増えてほしいな。

 

ファッションショーでの葛藤

木の大切さを普段の暮らしの中から意識して貰えるきっかけを作りたい。その思いが形になったのが木こりのファッションショー(『キ☆コレ〜キコリノシゴトコレクション』)でした。山で働く人のカッコよさをそのまま伝えたくて、普段の仕事の格好のまま、刈払機を振り回したり、チェーンソーのエンジンをかけてしまったりという表現になったんです。

開催した2回とも好評の声を頂きましたが、3回目は私が見送りました。始めは面白がってくれる人がいた。楽しければ、疲れることもない。「自分達がやりたい」と言う気持ちに突き動かされて、ワーっと開催できたんです。

ただ2回も開催すると人間って慣れてきますね。これはあくまで私の主観だけど、慣れてしまうことで、自分ごととして「どうやろうか?」と考える部分が少なくなった。「林業の仕事の魅力を伝えよう」という思いが薄らいだ様に感じて、3年目以降の開催は見送ったんです。みんなが自分ごとにならないことを実行することは出来なかった。

みんなで常に新しいことに挑戦し、それを進化させていくというのは難しいですよね。2年目で私の限界が来たかな(笑)

信者は作らない

一つ私が大事にしていることですが、信者を作りたいわけではないんです。いろんな考え方があることをみんなに知ってもらい「自分にとって本当に大事なこと」「自分なりの考え」に気付いてもらいたい。それが「自分ごとになる」ってことですよね。

そのために、まず私自身が自分の考えを持っていられるようにしたいと思ってます。だから私が林業に出会って最初の5年は、沢山本を読んで、その本に書いてあることは本当なんやろかと、自分で調べてみたくなって色んなところに行ったり、話を聞いたりして、ずっと自分が思ったことに対しての答え合わせをしているような期間でした。けど、どれだけ知識を取り込んでも、長く林業に従事されている先輩方にはどこまで行っても追いつけないんですけどね。

時間が足りない!

私は「自分がやりたい」と思ったことを、職場からも家族からもさせてもらっていて、本当にありがたいです。だからこそ、みんなに山の大切さを伝えたいし、伝わってほしい。

私が林業の大切さに気づいた時には30半ばを過ぎていました。それから仲間を集め始めたのも40歳を超えていたし、残りの時間が足りないと感じてます。自分の中に知識を蓄える時間もないし、それを伝える時間もない。1週間に1人ずつ伝えて行っても年間で52人、1000人に伝えようとすれば20年かかるけど、そんなんじゃ世の中変わらんしなぁ。人に伝えるための時間がないなぁ。

 

綺麗ごとでなく自分ごと

究極、自分ごとってのは「エゴ」だと思います。その人自身と、その人の家族ことを思うことが自分ごと。で、その自分ごとが隣の人の自分ごとと結びついていけば社会は変わっていくんじゃないの?って思ってます。

だからまずは大きく考えるのではなくて、まずは自分のために何かしたい、そして自分の大事な人のために何かしたいって思って、それがどんどん大きくなっていけば色々と変わっていくはずだし。だからエゴで考えていいと思うな。

私はいつもどこかで話す機会があった時には「SDGsのため」とか「社会のため」とか言わずに「あなたと、あなたの家族のために、さぁ自分が何をできるか考えよ」って言ってます。自分のことを考えることが、結果として社会を変えていくんじゃないかな。

 

 

 

インタビュアー : 髙桑 由樹(DaBaDee代表)
写真 : 石川県森林組合連合会

石川県木材利用推進協議会について


石川県木材利用推進協議会は、森林の役割と木材の良さを広く知ってもらい、木材の需要拡大を目的に活動しています。
当サイトは、その活動の一つとして木材の魅力を配信しています。
日本は、先進国の中では有数の森林大国です。
その森林の中核は終戦後に植えられた人工林で、すでに伐期を迎えるまでに成長しています。
石川県内の人工林においても、その多くは利用可能な状態に達しています。
木材を利活用することにより、森林の持つ公益的機能がより発揮され、バランスの取れた循環型社会が構築されるとともに、森林・林業・木材産業の活性化が図られます。
また、住宅分野では消費者の安全や安心に関する関心の高まりから、県産材へのニーズが高まっています。
このことから、協議会では、木材を生産する森林組合から住宅を建築する業界団体までがメンバーとなり、県産材の住宅分野での流通拡大に向けて協議を行っています。

詳しく見る